クエークエクエクエクエ!


異邦人『Soulチョンワ』

ミノルフォン KA−1022






歌唱に頼らず、音楽のみで人を笑わせようとする試みは、数多の冒険的なミュージシャンによって試みられてきた。その濫觴とも言える存在は、アメリカのスパイク・ジョーンズである。日本ではフランキー堺が、日本版のスパイク・ジョーンズ楽団を結成し、浅草国際劇場のステージに自動車を上げるなどの大掛かりなステージを試みた。また、この流れと異質なものとしては、あきれたボーイズ以来爆発的に流行した、所謂ボーイズスタイルの冗談音楽がある。多数の亜流グループが誕生した中で、音楽で純粋に勝負したハット・ボンボンズが異彩を放っている。
ところがこういった歴史とは全く無関係に、音楽のみで人を爆笑の渦に叩き込んでしまう楽曲が、76年に忽然として発売されたのである。それが今回紹介する、「嗚呼! 花の応援団」イメージソング・『Soulチョンワ』である。どおくまんの如何にも大阪ノリの濃いギャグに満ち溢れた原作漫画のエッセンスを、このレコードは音楽で見事に表現している。ジュディ・オングの『魅せられて』に酷似したメロディに、合間に挟まる『ペケポン』としか聞こえない意味不明の効果音。『あーあーあー』という脱力感に満ちたコーラス。間抜けなブレイクと共に、『Soul、』『チョンワ!』と絶叫するのは恐らく青田赤道その人であろう。そして盛り上がりは最高潮に達し、赤道は、『クエークエクエクエクエクエ!』と、放し飼いにされた東天紅の如き悲鳴をあげて、バンドの背後を駆け抜けるのである。そして何事も無かったかのように、演奏は再開されるのである・・・
合計3分31秒、間然とする所の無い見事な一曲である。これを聴いた全ての人間が、3分31秒の間トランス状態に陥って踊り狂ってしまうであろう事は、火を見るよりも明白である。日本人のソウル解釈の中でも、最高の傑作であると言ってしまったら・・・やはり過言かな。いや、私は大好きです。はい。


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